人生なんてわかんないもんね。
今、こいつなんて言った?
「俺と付き合ってくれ!マミ!!」
「ちょ、ちょっと!何言ってるのよ、ヘルムート!?」
驚いて思わず声がひっくり返っちゃった。
「あ、あんたこの前スズナに振られたばっかりじゃない!
あたしは何?その代わり!?」
「一年も前の事言うなよ。・・・俺は真剣に・・・」
だって・・・だってあたし達は・・・
それはある晴れた日の夕方の事だった。
港の方から明らかにヘコんでる奴が歩いてきた。
面倒見のいいマミさんとしては放っておけなかったのよね。
「よっ!なーんか暗いよ、君!どうしたの?」
「・・・関係ないだろ・・・。ほっといてくれよ・・・。」
「なによぉその態度!人がせっかく心配して、励ましてやろうと思ったのに!」
「・・・うっさいなぁ〜・・・失恋したんだよ、今日・・・。分かったらもう一人にしてくれ!」
へー・・・こんな顔のいい奴でも振られる事あるんだ。
もったいないなぁ〜誰よ、振ったの。
それにしても、悪い事しちゃったかな・・・
「・・・ごめんね、あたし無神経だったよね。本当にごめん!」
「いや・・・俺の方こそ八つ当たりしちまって、悪かったな・・・。」
「・・・・・・」
んーーーなんかほっとけないなぁ〜こいつ・・・。
よーし・・・
「悪い事しちゃったお詫びに、いいトコ連れて行ってあげる!おいで!!」
「え?」
「いいから!」
そいつの手をぐいぐい引っ張って、着いた場所はアイシャ湖。
でもちょっとみんなとは違う所から入るのがあたし流。
「ガ・・・ガアチウルグから・・・入るのか?」
「そうよ。ウルグと湖を仕切ってる岩場から飛び込むの。気持ちいいよ〜!」
「ぜ・・・絶対危ないって!怪我するぞ!」
「いいから、一回やってごらん!すっきりするから!ね!?とりあえず見ててごらんよ。」
ザッパーーーン!!!!
音を立てて飛び込むと体が湖に吸い込まれるみたいで気持ちいいの!!
あいつは・・・あ〜あ〜震えちゃってるよ〜・・・
上に向かってあたしは叫んだ。
「気持ちいいよー!」
「無理―!!」
「さっさと来〜い!失恋君!」
そういうとさすがにちょっとむっとしたような顔をして奴は言った。
「・・・やったろーじゃん。まままっ待ってろっ!」
そういったもののまだまだ躊躇してる。
しょうがない奴。
「どうしたのー?早く飛び込みなよー!」
「や、やっぱり一歩間違ったら死ぬぞこれ!?」
「あたしは平気じゃん!大丈夫だよ!!」
「お前は普通じゃねぇんだよ!!」
「何よそれー!?自分が怖いだけでしょー!?意気地なし!!
男だろー!?さっさと来い!!ロンゲー!!!」
「い、言ったな!この、この・・・イモムシあたまぁあぁあぁあぁ〜〜〜〜〜!!!!!」
バッシャーーーン!!!
「やった!大成功!!」
「・・・ぶはぁっ!・・・はぁはぁ・・・」
「あははは!どう?気持ちいいでしょ?少しはすっきりした?」
「あぁ、いいなこれ!」
「でしょ?・・・あたしは、嫌な事があるといつもこれをやるの。
うだうだ考えるのってあたしらしくないし、どうにもならなくて
解決策も見つからない時なんか・・・ええい!もう忘れちゃえ!ってね!」
「お前、面白い女だな!えっと・・・」
「あたしはマミ!」
「俺は・・・ヘルムート!」
そう言って笑ったヘルムートは、さっきまでずーんと重い空気をしょったみたいな表情をしてたくせに、
嘘みたいに快晴の笑顔になった。
その後夢中になって水遊びしていたらあっという間に日は暮れてしまったけど、
あんたの笑顔が見られただけで、よかったって思うよ!
あたし達、いい友達になれそうだね、ヘルムート!
でもまさか、こんな日が来るなんて・・・ね。
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